特集プロローグ (Coyote No.55 旅する二人 キャパとゲルダ 沢木耕太郎ー追走)

2015/03/19

ロバート・キャパと
ゲルダ・タローは旅する人だった。
彼らにとって旅とは何だったのか。
かつて私は、旅を「余儀ない旅」と「夢見た旅」に二分したことがある。
強いられて余儀なくする旅と自らが望んでする旅との二つがあると。
だが、それはひとりの人物が常にどちらかの旅をしているということではなく、
あるときは「余儀ない旅」をし、
あるときは「夢見た旅」をするということであった。
人はその人生の中で、「余儀ない旅」を続けながら、
時として「夢見た旅」をするのだ、と。
キャパとゲルダの旅する人生の中でも、
それらは交互に現れたり、ない混ぜになったりしている。
二人は旅から旅を続け、旅の果てに死んだ。
死んだのは、どちらも戦場という「旅先」だった。

沢木耕太郎

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Posted on 2015/03/19