ジャズでなければ


 「スイッチ」のジャズの特集は1989年2月クリント・イーストウッド監督による『バード』を中心にすえたものが最初だった。「クールヘの献辞」と題してナット・ヘントフやノーマン・メイラーが寄稿、ジャズに魅せられたクリント・イーストウッドへのインタビューが印象的だった。

「ジャズはジャズであって、他のいかなる表現手段にも代えられはしない。にもかかわらずある者はステージを写真におさめ、ある者はジャズをテーマに小説を書き、ある者はジャズメンの人生を映画で描こうとする。ジャズは耳だけではなく、目に見える何かを通して現される

ジャズとの出会いが幸福である時に、ジャズは形を得て別な事柄を想起させ、演じる者をさらに深みに導いてくれる。
人間の思想には二つに分かれるとタモリは言う。「平地」の思想と「坂道」の思想。平地の思想は存在を時間で考えようとする。タモリはその例としてハイデガーを挙げた。そして坂道の思想は崖の上に立って自由意思が死を選ぶこともできるという、不安と隣り合わせで生きることを選ぶ、キルケゴールを挙げた。ノーマン・メイラーはこれをヒップとスクエアという言葉で分け、アップダイクは泳ぎに譬え、沖に向かうか岸に沿って泳ぐかと、作家の姿勢を問う。タモリの思想の話には先がある。ハイデガーの『存在と時間』は黒い森は見渡せる急斜面に立つ家で書かれたというのだ。
ジャズは演奏者の自己主張が12音節に集約する音楽だ。俺の話を聞いてくれ。ジャズを楽しむにはその話を聞いてあげる優しさを持たないといけないとタモリは言う。演じる者が何をしてくれるのではなく、聴く者が演じる者に対して何をするか、タモリの生き方そのものだ。坂道こそジャズ、つい穿った見方になる。表現者の意思を受けて雑誌もまたジャズでありたい。

(SWITCH編集長 新井敏記)



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Posted on 2015/4/30
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