SWITCH INTERVIEW ――多田玲子「チュンチュンチュン、ジーコロコロ」 前編 2page

写真・浅田政志

「当時は、漫画を描いたりはしてたの?」

「自分とお兄ちゃんが主役の漫画を描いてました。ホチキスでガチャンガチャン留めめて、九巻くらいになりました」

「どんな漫画だったの?」

「片山まさゆきって漫画家がいるんですけど、麻雀の漫画で『ぎゅわんぶらあ自己中心派』とか『スーパーヅガン』って、その漫画も家にあって、麻雀はよくわかってなかったんだけど、その人の絵を真似て描くのが好きで、その絵をコピーして、兄とわたしを描いてました」

「漫画の題名は?」

「題名は、『アダムとイブ』ですって、恥ずかしいんですけど」

「なんか禁断の兄妹みたいな、ヤバい話なの?」

「そういうんじゃない。なんにもわかってなかったんで、お兄ちゃんとわたしなのに」

「アダムとイブにしちゃったんだ」

「はい。恥ずかしいな」

「でも9巻て、すごいね。最後はどうなるの?」

「どうなったんだろう? なんだか恥ずかしいんで、思い出そうとするのを拒否してる自分がいます」

多田さん、ジーコロコロ、小学生へ。

「小学校は私立だったんですよね」

「桐朋学園で、国立まで通ってました」

「電車?」

「混みこみで大変だった。でも国立が良い場所で、あたりを歩くのが楽しかったな」

「どんな小学校生活でしたか」

「1年2年はおとなしくて、絵を描くのが好きで、髪の毛もモサーっとしてて、運動もあまりできなくて、けん玉してました」

「けん玉」

「なんだったんだろう。あんまり周りが見えてない小学生でした。髪の毛も前髪がモサーっとしてたから」

「髪で前が見えない」

「そうなの、いつも目の前に滝が『ザー』って流れてるみたいだった」

その滝は髪の毛だったけれど、意識的な滝でもあって、それが左右にひらかれるきっかけがあったそうです。

「幼稚園もいじめがあったけど、小学2年の時には、もっとキツい、いじめがあったんです」

「どんないじめだったの?」

「学校は2クラスしかなかったんだけど、同じクラスには帰り道が同じ方向の生徒がいなかったんです。だから1人で優雅に帰ってたんだけど、ある時、他のクラスの2人に、『一緒に帰ろうよ』と声をかけられて、それで帰るようになるんです。でも、その一人がすごい意地悪な子だった。最初は、わたし以外のもう1人の子がいじめられてたみたいなんだけど、それがわたしにまわってきて」

「理由なく」

「そう、いわれのないいじめ。でもいじめていた子は、気持ちがクサクサしてたんだと思う。お金持ちの家の子だったけど、親が、ちゃんとかまってくれてなかったとか」

「どんないじめだったの」

「教科書を破かれたり、制服のボタン取られたり、駅のトイレに閉じ込められて、モップでつっかえ棒されたり」

「本格的だな、小学2年なのに」

「そうなんです。そんなのがいろいろあって、でも、ある日、ハッと気づいたんです。『こんなことされてたらダメじゃん!』って、それまでは縮こまってたんだけど、もうこれは言わなくちゃって」

「それでどうしたの?」

「暴れました。『もう、こういうのやめ!』って。その子に向かって『先生にも言う。親にも言う、警察にも言う!』って、駅で暴れたんです。そしたら、向こうも子供だから『お願いだから言わないで』って言ってきた。でも、わたしは、『絶対に言う! じゃあ、失礼します』って帰ったんです。でね、その時のいじめで、制服のボタンを取られたんだけど、『ただいま』って家に帰ったら、『あらどうしたの?』って親に言われて、隣のクラスにこういう子がいて、これこれこういうことが色々あったんだって話したら、親が『なぬっ!』ってなりまして、学校に電話して、先生が集まって、親が集まって、会議が行われ、それで解決」

「よかった」

「そこからひらいたんですね」

「滝が」

「そう。こうなってちゃダメだ、言わなくちゃダメなんだと。それに体力もつきはじめて、髪も短く切って」

「髪の毛モサーっもひらけた」

「物理的にもひらけた。それで、次のクラス替えの時も、わたしは、いじめの主犯格の子とは一緒のクラスには絶対ならないように先生が配慮してくれて。平和な生活がはじまるんです。しかも三年生になったら、同じ帰り道の子供が転校してきて、シンガポールから帰ってきた子で、その子と親友になりました」

「その子と遊びながら帰ってたの?」

「ゲームセンターとか本屋に寄りながら帰った。あと、小学生なのに喫茶店に寄ってみたいと思ってた。でも普通の喫茶店は無理だから、ドトール寄ってみようかと、それでアメリカンコーヒーを飲むとかやってたな」

「小学生が」

「背伸びして」

「クラブ活動は?」

「5年生の時、まったく向いてないのに、バレーボール部に入りました」

「漫画の方は?」

「漫画は描きたかったし、描いてたんだけど、最後まで描く足腰がなかった」

「足腰?」

「始めても4ページくらいで終わっちゃう。最後までいかない」

「漫画以外は、どんなことを?」

「同居してたおばあちゃんが『TVガイド』を買ってて、終わった『TVガイド』をくれたんです。その映画の欄のあらすじを読むのが好きでした。それを切り取ってノートに貼ってました」

「なんだか、なんでもかんでも、どんどん吸収してく時期だったんですね」

「そう。それでいつかは漫画を描きたいと思ってるんだけど。いざやってみると描ききれない。でも一枚の絵を描くのは好きでした」

多田さんは、いまでも吸収する勢いが凄い。ちなみに『TVガイド』のスクラップはまだ家にあるそうです。では中学に入りましょう。


後編へ続く


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