GO THE WILD SIDE OF MUSIC――VOL.5 iri

変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第5回はハスキーな歌声を自在に操るシンガーソングライター・iri

PHOTOGRAPHY: SHINTO TAKESHI  TEXT: ITAKO JUNICHIRO




DNA MUSIC
iriが憧れるミュージシャンたちのジャンルレスな30曲


ポップスやロックからR&B、ヒッピホップまで、様々な音楽的エッセンスを血肉化したiriの音楽性の土台にあるグッドミュージックの数々



INTERVIEW
時代を超える曲を残したい


神奈川県逗子在住のシンガーソングライター・iri。現在はライブハウスやクラブなど様々な場所でパフォーマンスを披露する彼女だが、幼い頃は人前に出ることが苦手だったという。

「小学生の頃は恥ずかしがり屋で、でも人に合わせたりはせずマイペースな子でした。女の子特有の集団行動も苦手で、自分だけ違うことをすると周りから『変だね』と言われて。でも私の何がおかしいの?とも思っていて、みんなと馴染めない時期もありました」

孤立したiriを救ってくれたのが、スクールカウンセラーの先生だった。

「話を聞いてくれて、あなたは何も間違ってないし、あなたはあなたのままでいいんだよって。そういう経験があったので、漠然と将来はカウンセラーになりたいと思うようになったんです」

しかし、あるシンガーとの出会いをきっかけに、彼女は歌うことを生業にしようと決意する。

「アリシア・キーズの『If I Ain’t Got You』のライブ映像を見た時に、歌を聴いて初めて涙が出たんです。自分も人の心を動かす歌を歌う人間になりたい、そう思いました。私はカウンセラーの先生にも音楽にも同じように救われたのかもしれない。誰かのことを受け入れ、味方になってくれる。そこが共通点だと思います」

その後、iriは地元逗子のジャズバーでバイトをしながら時折ステージで歌うようになり、高校生の時には友達に連れられて観た七尾旅人のライブに感銘を受け、独学でアコースティックギターを学び、弾き語りライブもするようになる。そして、2016年、アルバム『Groove it』でデビューを果たした。

デビュー後、iriはケンモチヒデフミ、小袋成彬など多彩なトラックメイカーと共に楽曲を生み出している。そして、この2月にリリースするセカンドアルバム『Juice』では、5lackやyahyel、WONKなどこれまで以上にバラエティに富んだアーティストとも共作した。

「制作はいつも刺激的です。基本的にはトラックを聴いて浮かんできた自分の感情をメロディや言葉にして乗せて、徐々にブラッシュアップしていくやり方です。だから最初に曲のテーマを決めて作るという形ではなくて。そういう意味では、ファースト、セカンド共に、メロディもリリックも自分の衝動に従って積み上げていった結果の作品という感じです」

そうして生み出された彼女の歌は、ライミングとスムーズな歌メロが混ざり合ったものになる。その歌唱法、そして複数のトラックメイカーが参加して楽曲制作するというスタイルは、現行の海外の音楽制作のスタイルにも通じる部分があるように感じる。

「意識的にそういうスタイルを選んでいるわけでもなく、自然とそういう作り方になっていったという感じで、私の軸にある歌い回しやグルーヴ感は昔から何も変わっていないと思います。それはリリックも同様で、明確な答えを提示するのではなく、言葉の断片から聴いた人がいろんな景色や感情を想起できる言葉を書きたいと思っていて。ある意味、曖昧で抽象的な歌詞かもしれないけども、フックに私自身の強い思いを言葉にして入れることで、聴いた人の背中を押せるような歌にできたらと思っています。今回の『Juice』もそういう曲を詰め込んだ一枚になったんじゃないかなと感じています」

終始言葉を探すようにインタビューに答えてくれたiriだが、最後に語ってくれた言葉からはアーティストとしての強い信念が感じられた。

「もしかしたら私がやっている音楽性は今のトレンドに近いかもしれない。でも私としては今っぽいよねと言われるものではなく、メロディ、ビート、リリックなどすべてのバランスが取れていて、時代を超えていつどんな時に聴いても良いと思える曲を残したいんです」




iri 2014年、オーディション「JAM」でグランプリを獲得し、2016年に『Groove it』でデビュー。2/28にはセカンドアルバム『Juice』をリリースし、3/15からはアルバムを引っさげてのツアーが始まる。www.iriofficial.com

iri Spotify オフィシャルアカウント




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