SWITCH INTERVIEW ―― 優河「抹茶、オレオクッキー、ラズベリー」 〜後編〜 2page

写真・浅田政志


「それは何かから、抜け出した感じだったのかな」

「はい。そこから性格も変わりました」

「新生・優河になったきっかけは?」

「高校を卒業したら、どうしようか決めてなかったんですけど、友達が音楽の学校に入るので『優河も行ってみれば』って言われて、その4日後に入学してました。そこから変わっていったような気がします」

「変わったのは、どんなところが?」

「それまでは人を信じないというか、人の顔色ばかり伺っていた気がします。両親が芸能の活動をしていて、それで見られることが多かった。それがコンプレックスでした。だけど、そのコンプレックスから抜けて素直になっていった」

「なるほど」

「人に甘えられるようになったというか、無理なものは無理と言えるようになりました。あとは単純に人と話せるようになったのかな」

「壁を作らずに」

「はい」

「じゃあ新生になったから、音楽の学校は相当楽しかったのではないですか?」

「そうです」

「場所は?」

「池尻大橋です」

「吉祥寺を抜けましたね」

「はい」

「学校ではどんなことを?」

「そのときは、カバーしか歌ってなかったんですけど、あるとき先生に、『お前は歌えるのに、自信なさげで、ムカつくな』って言われて、『曲作ってこい』って言われたんです。それで作っていったら、『まだムカつくな、ギターでも弾いてこい』って言われて、ギターも弾きだして」

「先生に言われて」

「そう。『なんかお前気に食わない』って言われて、やっぱり人に言われて、いろいろはじめて、自分で決めてないような」

「でも先生のその言葉で、曲を作り出したんですもんね」

「はい」

「最初に作った曲は?」

「ラブレターという曲です。恥ずかしくて、いまは歌えないです」

「その後、どんどん作ってくんですよね」

「そうです」

「ライブとかは?」

「最初は、小さいところで、友達とやったりしてました。それで、高校時代から習っていたボイトレの先生が、サラヴァ東京というお店ができたから、そこのオープンイベントのオープンマイクで歌わないかと言われて、歌ったんです。そしたらアツコ・バルーさんというオーナーの方に、『あなたここで働きながら、ちゃんと音楽やりなさい』って言われて。それで学校に通いながら、バイトしてました。そこからサラヴァ東京をメインにライブをやるようになります」

人前で歌い出した優河さん。

優河さんは、人に促されてというけれど、あの歌声は、歌うべき歌声であったのかもしれません。

さらに誰でも、優河さんの歌を聴けば、他の人にも聴いてもらいたいと思ってしまいます。


「ストリートとかで歌ったりは?」

「一、二度、吉祥寺で歌ったことがあります。自分の歌でお金をもらえるだろうかと思って」

「場所は?」

「井の頭公園」

「吉祥寺だ。結果は?」

「お金はもらえなかった。でも、おじさんが一人話しかけてきて」

「そのおじさんは、どんな人だったんですか?」

「おれはギター作ってるんだと」

「ギター作ってる人だったんだ」

優河さんが井の頭公園で、さりげなく歌っていると、自然に紛れ込んでいるような感じがして、どこにいるのかわからなくなってしまいそうです。

「でも、そのころは、今の声と違って、もう少しべたっとしてました。奥行きがなかった気がします」

とにかく歌いはじめ、歌を作り出した優河さん。どのようにして歌を作っているのでしょうか?

「歌詞の着想は?」

「まず景色がはじまりですね。あとは、ピンと来る人がいたら、その人の人生を想像して書いたり」

「その人の物語を勝手に考える?」

「そう、勝手な物語です。その人のふとした表情とか、ボソッと言った一言から物語を作っていく感じもあります」

世の中には、優河さんの歌を聴きたい人が、まだまだ沢山いるはず。

あの歌声が、いろいろな場所で流れているのをわたしは聴きたい。そして、その場が少し静まってしまうのを。でも、そのとき我々は、とても清々しい気持ちになっていることでしょう。これからも、どんどん歌を作って、いろいろな場所で、歌を唄ってください。



優河 1992年生まれ。シンガーソングライター。心震わせる歌声は注目を集め小島ケイタニーラブやおおはた雄一など、多くのスタジオレコーディングに参加。また待望のニューアルバム『魔法』を3月2日にリリースすることが決定。千葉広樹(Kinetic、サンガツ、rabbitoo等)、岡田拓郎(ex.森は生きている)やharuka nakamura、神谷洵平(赤い靴)らといった実力派ミュージシャンとエンジニアの田辺玄を迎え、エレクトリックな楽器やサウンドを取り入れることによりこれまでとはひと味違った作品に仕上がっている。アルバム発売を記念して4月13日には渋谷 QATTROでのワンマンライブも決定している。
http://www.yugamusic.com

戌井昭人 1971年東京生まれ。作家、パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」の旗揚げに参加、脚本を担当。『鮒のためいき』で小説家デビュー、2013年『すっぽん心中』で第四十回川端康成文学賞、16年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で第三十八回野間文芸新人賞を受賞。最新刊は『ゼンマイ』


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