SWITCH INTERVIEW ―― 垂見健吾「南方のタルケンさん」 ~前編~  2page

写真・浅田政志


「それは、どうやって食べるんですか」

「蜂の巣は六角形のハウスがあるから、そこを針で、 チュッチュッチュとやって取り出すの、中に蜂の幼虫がいてね。ものすごい栄養の詰まったやつだよ。それを集めて、お母ちゃんに渡すと、砂糖と醤油で煮てくれて、ご飯に入れて炊き込みご飯だ。蜂の巣はパイ状の断層になってるんだけど、その中に柔らかい幼虫からちょっと固くて黒っぽい成虫に近いものまで、整然と並んでいるんだよね」

「成長してるんですね」

「そうなんだよ。でも、そういうのも食うけどね」

「タンパク源ですもんね」

「あとは、さっきも話したけど鳥だね。よく鳴くメスの鳥を友達が持ってたから、それを連れてくと『ピュー』っとオスが飛んで来るんだ。それで学校から帰る頃は、かすみ網のなかで、鳥がグチャグチャになっててね、それを解いて、手の中で頭をプチっとまわすと、ウンコが『ピュー』っと飛んで、絶命するんだよ」

「ウンコ飛ぶんですね」

「そうなの。それから河原に行って、羽をむしって、家に持って帰って、料理してもらうんだ」

「美味しいんですか?」

「美味しいですよ。その鳥を捕るのを商売にしていた人もいたな、おれが小学生の頃は」

「かすみ網は、そのとき、もう違法だったんですか?」

「そうだよ。山の上の方に張ってさ、警察が来ると」

「撤去する」

「でも山の奥の方だから、警察なんて来ないんだよな」

はじめ人間の生活を続け、中学時代も山を走りまわっていたタルケンさん、高校生になります。

「高校は町までバスで通ってた。長野県立蘇南高等学校。そこには自分たちの集落じゃない人もいたし、汽車も走っていた。木曽川があって、水力発電があるんです。水力発電は、福澤諭吉の婿養子で福澤桃介ってのがやってて、その人は中部電力の電力王って呼ばれてた」

「水力発電はダムですか?」

「川を堰き止めるんじゃなくて、水をグォーッと山の上にあげて、一気にドーンと落とすんだね。とにかく、発電事業が盛んだったんだ」

「昔、長良川で見たけど、ぶっといパイプが山から下りてるやつですかね」

「そう、それだよ。シンプルな発電だね。黒部ダムみたいのじゃないよ。あんなことしたら、おれたちの集落全部水の底だよ」

「そうですよね」

「部活はやってましたか?」

「中学高校は陸上部にいたんだ。でね、1964年の東京オリンピックに出たんだ」

「え?」

「聖火ランナーの付き添いだけどね」

「伴走ですか?」

「そうなんだ。学校の先輩の女子が高校の新記録を持ってて、彼女が、聖火ランナーで走ることになったから、その伴走だね。それでメダルも貰ったんだ。金銀銅ってメダルがあるでしょ。おれが貰ったのは鉄だった。でもデザインが一緒だった」

「伴奏でもオリンピックを体験したんなら、将来は、スポーツの道に進もうと思っていたくらい、陸上にのめり込んでたんですか」

「そうなんだ。勉強は嫌いだったけど、だから体育の先生になろうかと思ってたんだ。でも甘かったね。県大会に行ってもビリッケツだしさ。それで、高校三年の時にスポーツはやめて、そうだ美術だ、美術に行こう、と思ったんだ」

「突然、美術へ」

「だって勉強嫌いだから、体育か美術しか選択がないんだもん。それに、たまたま親父の従兄弟にデザイナーがいたんだ。新幹線の椅子とか把手とかデザインしてたの」

「工業デザインですね」

「当時渡辺力先生の事務所に勤めていた、垂見健三というデザイナーで」

渡辺力さんは、ジャパニーズデザインのパイオニアと呼ばれていた、日本のデザイン業界の重鎮です。

「でね、デザインに行こうと思ったんだ。コレしかない、なんとかなるんじゃないかなと思って、でも美大は無理だから、そうか専門学校だと。それで、かろうじて補欠で桑沢デザイン研究所に引っかかったんだ」

「補欠?」

「そうなんだ、一回落ちたんだけど、すくい上げでひろってもらったの。それで、東京に出てきたら、同級生が、おじさんおばさんなんだ、ほとんど年上でさ」

「みんなは、大学出たりしてから入学したのかな」

「そうなんだよ」


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<イベント情報>
或る日の私のおきなわ
A day in the life of RYUKYU

2017.10.06(FRI)-10.31(TUE)
垂見健吾が発起人となり、沖縄にゆかりのある50人の写真家たちが一同に会した合同写真展が、沖縄コザのプラザハウスにて開催中。多彩な顔をもつ沖縄の姿を、幅広い世代の写真家がそれぞれの視点で切り取っている。写真家が愛した沖縄の新たな一面を知るまたとない機会になるだろう

RYCOM ANTHROPOLOGY
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