SWITCH INTERVIEW ―― ひがしちか「全部東京でつくられとるばい!」 ~前編~  2page

写真・浅田政志


「畑を燃やしたり」

「え? 焼畑の手伝い?」

「いえ。田舎でなにかと火を使うことが多かったんです。ゴミ収集車も来ないようなところだったから、家庭から出るゴミは庭に埋めるか、ドラム缶とかで燃やしてたんです。お風呂も火で炊いてました。そこで見せたくないテストを燃やしたり。あと隣の家に同い年の子がいて、その子と遊んでました。そこでは豚を飼っていて、ほかに、苺とか人参を育ててる農家だったんです。あるとき『遊ぼぉ』って行ったら、『ちかちゃんの声がせんね、手伝わんね』て言われて、手伝わなきゃ遊べない感じになりまして、中学の頃は、イチゴのパック詰めを手伝ってました」

「子どもと大人が一緒になっている感じですね」

「家も自動車の整備工場だったので、車好きのお兄ちゃんたちがやってきて、一緒にバスケットボールしたり、映画に連れてってくれたりしました」

「遊んでいて怪我とかはしなかった?」

「小学一年のとき、同世代で学校の行き帰りしてたんですけど、その途中、稲刈りをした後の田んぼがあって、男子が、そこに飛び降りられると言って、飛んだんです。それで、わたしも飛んで、家に帰って、トイレに入ったら、パンツに血がついてたんです。『お母さん、パンツに血がついとる』って言ったら、お母さんは生理がきたと思ったんです」

「小学一年で」

「それで病院に行ったらおそらく刈りたての稲で切れてて、縫うことになって、でも、そこでは麻酔ができず」

「うわぁ」

「看護師さんに手足を掴まれて、あたしが『ギャー』って泣いていたのを見て、お母さんも泣いてたのを憶えてます。そのあと、キリンの巾着袋にシルバーの缶を入れて、缶には脱脂綿とピンセットが入っていて、おしっこしたら、自分で消毒してました」

話がそれましたので、ひがしさんの話に戻ります。

「部活は?」

「中学はバスケットボール、小学生の頃もバスケをやっていて、県で一番になったことがあるんです。さらに、わたしキャプテンだったんです」

「すごい。それじゃあ中学は、ほぼバスケ漬けですか?」

「でもね、うちは、勉強しなさいの家だったんです。『努力しない奴に飯は食わせん』とか『お前たちは、こんな田舎で一生を過ごすな』『学生の仕事は勉強だ』って父に言われてました。とにかく、もっと外に出ろと。父は、自分も出たかったんだろうけど、いろんな事情があって出られなかったみたいで」

「でも勉強がわからないと、お兄さんに教えてもらえた」

「はい、兄も父も教えてくれました」

「高校は?」

「市内の進学校に行きます」

「高校生活は、どんなでした?」

「本当に勉強ばかりの学校で、朝六時のバスに乗って、一時間目がはじまる前、七時の補習に出たりしてました」

「とにかく勉強ばかりだったんですね」

「でも、勉強をしなくなるんです。高校二年ぐらいから、いかにサボるかという方向に向かって」

「なにしてサボってたんですか?」

「町の本屋さんに行ってファッション誌を読んでました」

「それで、ファッション方面へ行きたいと?」

「将来のことはあまり考えてなかったけど。ファッション誌を見て、こういう世界があるんだと驚いたんです。ハイファッションのビジュアルや、オートクチュールのドレスを着て宙に飛んでるような写真があって、ビックリした」

ひがしさんは、勉強をサボっていたことによって、町の本屋で将来の道につながるようなものを見つけたのかも。

「雑誌の裏を見ると東京の住所があって、『全部東京でつくられとるばい!』、『東京に行けば、全部あるじゃないとね!』と、東京への憧れが加速します。それで近所に、田舎なのにハイファッションの服を扱う店があって、そこに行くようになり、こっそりバイトをして服を買ったり、自分で作るようになります。で、ますます勉強しなくなって、これでは大学に行けないぞ、となりまして」

「ファッション誌と自分がつながっている感じだったのかな」

「妄想ですよ。さらに東京に対する妄想も」

「でも高校三年になったら、進路を決めなくてはならない」

「もう、大げんかです。父とは、だんだん会話もなくなって」

「お母さんは?」

「母はあっけらかんとしてたけど、お父さんが言うならって感じでした。それである日、『流行通信』の編集部に電話をかけて、『撮影現場に行きたいんですけど』って話したら、『いいですよ』と言われて、置き手紙をして、長崎空港に行ったんです。そしたら空港に警察の人がいて『ひがしさんですか? 一緒に帰りましょう』と言われて、帰ったら、めちゃくちゃ怒られました。でも、とにかく洋服を作れれば生きていけるという話の流れになって、それを説得材料にしたら、父と母は、なんとかわかってくれて、文化服装学院に行くことになります」

ひがしさん、いざ東京へ。


後編へ続く



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