『恐竜たちがいるところ 詩はどこから来るの?』 谷川俊太郎×下田昌克 特別対談 PART2

PHOTOGRAPHY: IKEDA MASANORI,TADA

恐竜たちがいるところ
詩はどこから来るの?

対談 谷川俊太郎 + 下田昌克


 画家の下田昌克さんと詩人の谷川俊太郎さんが紡ぎ出した一冊、『恐竜がいた』が発売になりました。
恐竜に大いなるロマンを感じキャンバス生地で恐竜をつくり続ける画家・下田昌克さん。「ぼくは下田くんの作る恐竜に興味がある」そう言い切る詩人・谷川俊太郎さんの詩に励まされ、下田さんは次から次へと恐竜制作に勤しんできました。そんなお二人の創作の秘話とは?


PART2


いつも大事にしていることは?

下田 常に他人のことを考えて仕事をしている。喜んでもらえることが一番大事。自分の作品は決してアートではないと思っているんです。

谷川 ぼくも常に読者のこと、他人のことを考えて詩を書いています。

下田 ある絵本の依頼があって一所懸命今までとは違った作風で描いたら、この絵だったら違う人にお願いしますと言われたことがあって。

谷川 ほんと。

下田 ぼくもすぐに納得して、そうだよねと描き直した。谷川さんは詩は何文字と指定された方が書きやすいと言われましたね。

谷川 そうだね、束縛されると書きやすい。「恐竜仮面」をはじめて見た時からだんだん詩を書いていって、そして家に持ってきてもらって実際に被ってみたりするとまた違った世界が見えてくる。そして写真になるとさらに違ったものになる。

展覧会を経てさらに濃厚になった。正直言葉なんて全然なくていいと思っていた。写真とほんものがあれば。




 下田さんと谷川さんの出会いは雑誌「コヨーテ」のアラスカ特集だった。詩人谷川俊太郎は二〇〇九年南東アラスカの旅に出た。詩人ってなんだろうとアラスカの旅で思った。悠久の森、手つかずの自然がアラスカにはかろうじて残っている。

かつて二万年前のモンゴロイドの氷原の無氷回廊を渡った旅を詩人の目を通して想像することができるかもしれないと思った。その詩人の旅に下田さんの同行を願った。詩人は朝に一杯の珈琲を呑み、鳥の声に耳を澄ませ、夕に陽が落ちる海を眺めた。そして詩を書いた。

 下田さんはクリンギットインディアンの古老の似顔を描き、口承伝達されたインディアンの神話を一つひとつ形にしていった。

 ある朝下田さんは谷川さんに肖像を描かせてほしいと伝えた。そして大きなスケッチブックを開くと色鉛筆で点描のようにカキカキカキという音を立てて一気呵成に描いていく。緑色、赤色、黄色、青色と等高線のような年輪のような輪郭が形成されていく。なるほどこれは目だ、これは鼻だというように。このとき詩人はずっと沈黙を守っていた。一本の樹によらず、一羽の鳥によらず一語によらず。

アラスカは彼らの夢の中で分かち合う時間だった。深くゆったりとした声で語られる理性の光の届かない物語、そしてその明るさに心ときめいた。そのとき私たちは風の言葉も熊の言葉も苔の言葉も雲の言葉も星の言葉も森の言葉も骨の言葉も聞くことができた。

 下田昌克さんがキャンバス地を駆使して恐竜を作ることは魔法の言葉を持って生きることだ。ふと口をついて出た言葉が不思議な力を起こすことがあると彼は信じた。アラスカ以来、彼の世界はそのようにできていった。

 好きなことを形にする。谷川さんの詩が励ましとして響くのは変わらない詩人の姿勢ゆえだ。アラスカで肖像画を描いた下田さんに興味を覚えたのも、好きなことを自由自在に描く画家の指先のほんの先にある人々の笑顔からだった。

「前から下田さんに訊きたかったんだ」あるとき谷川さんが訊ねた。

「なんですか?」

「ゴジラは恐竜? 怪獣?」

「恐竜です」下田さんはきっぱりと答えた。

「なんで?」

「なんでも。後で調べます」

 作中では古生物学者の山根恭平博士が「ジュラ紀から白亜紀にかけて生息していた海棲爬虫類から陸上獣類に進化しようとする中間型の生物の末裔」だと語っているとWikipediaには記されていた。

「でもWikipediaだからな」下田さんは今も谷川さんに出典を告げずにいる。


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『恐竜がいた』
詩:谷川俊太郎 絵:下田昌克

悠久の時間旅行へーー
全20回にわたる雑誌『SWITCH』での連載が、待望の書籍化!

本の詳細はこちら



『恐竜がいた』展
谷川俊太郎(詩人)+下田昌克(イラストレーター)
池田晶紀(写真家)+ただ(写真家)


SWITCHで全20回の連載をした、詩人・谷川俊太郎さんと画家・下田昌克さんによる「恐竜がいた」。この度、本連載の待望の書籍化を記念して、ほぼ日刊イトイ新聞さん運営のTOBICHI2にて「恐竜がいた」展を開催します。

原画をはじめ、谷川さんの詩、下田さん作のキャンパス生地で作られた迫力ある恐竜たちを展示します。
会期中にはゆかいプロデュースによる「なりきりパシャり!勝手に撮れる写真館」や、谷川さん・下田さん・糸井重里さんによるトークイベントも開催。 下田さんのアトリエスペースもご自身と共にTOBCHI2に出張してきます。

会期中、TOBICHI2では新刊をはじめ、「SWITCH」バックナンバー、恐竜グッズなどの販売も行います。みなさまのご来場、お待ちしております。


<会期>
9月22日(木・祝)〜10月2日(日)
11:00〜19:00
入場無料


【なりきりパシャり!勝手に撮れる写真館】
produced by ゆかい
会場には下田さん作品の恐竜を身につけて
自由に写真を撮っていただけるコーナーを設けます。
「ゆかい」のみなさんによるプロデュースで、撮影現場を再現。
下田さんの直筆イラストも効果的にセッティングし、
本から飛び出したようなショットが撮れるかも。
ご自身のカメラや携帯でご自由に撮影いただけます。
撮った写真はご自由にSNSなどにアップしていただけます。
できれば黒いTシャツでのご来場がおすすめです。
*じっさいに身につけていただける恐竜は会場内で指定があるものに限ります。


【谷川俊太郎+下田昌克+糸井重里トークイベント】
10月1日(土)18:00〜
募集開始は9月中旬より、ほぼ日刊イトイ新聞にて。
抽選で当選された方をご招待します。

<会場>
TOBICHI2
東京都港区南青山4-28-26

<問い合わせ先>
tobichi@1101.com


<プロフィール>
谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)
1931年東京都生まれ。52年詩集『二十億光年の孤独』でデビュー、作詞、絵本、翻訳、映画脚本と幅広いジャンルで活躍し、82年『日々の地図』で読売文学賞受賞、10年『トロムソコラージュ』で鮎川信夫賞受賞他、受賞も多数。下田昌克とはアラスカで出会い、クリンギットインディアン、ボブ・サムの絵本をはじめ、いくつものコラボ作品を発表し続けている。

下田昌克(しもだ・まさかつ)
1967年兵庫県生まれ。イラストレーター、世界を旅行しながら出会った人々の肖像画を描き続け、日本に持ち帰った絵で週刊誌での連載を開始した。現在東京新聞、週刊文春と連載多数。おもな著作は『ヒマラヤの下 インドの上』『くじらの歌』など多数。

池田晶紀(いけだ・まさのり)
1978年神奈川県生まれ。写真家。株式会社ゆかい代表。雑誌、広告、CDジャケットなど幅広く活躍。さらに、水草プロレイアウター、シェアリングネイチャー指導員、かみふらの親善大使、FSC(フィンランドサウナクラブ)会員、サウナ・スパ健康アドバイザーなどの活動も行なっている。

ただ
1981年神奈川県横須賀市生まれ。写真家。2007年写真家・池田晶紀率いる「ゆかい」に所属。主にポートレイト写真から物撮りまで、書籍、雑誌、広告、CDジャケットWebなどの分野で幅広く活躍している。また近年は、スチールだけではなく映像のカメラマンとしても活動を開始。

糸井重里(いとい・しげさと)
1948年群馬県生まれ。コピーライター。「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰。広告、作詞、文筆、ゲーム制作など多彩な分野で活躍。著書に『ぼくの好きなコロッケ。』『ボールのようなことば。』『さよならペンギン』(湯村輝彦との共著)『夢で会いましょう』(村上春樹との共著)『黄昏』(南伸坊との共著)など多数。


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